October 16, 2006

「Arturo Benedetti Michelangeli 頌」(つづき)


矯正歯科 : 鎌倉 dentfaco 山本歯科・矯正の Blog
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Arturo Benedetti Michelangeli(ABM)=アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリとわたしとは,以前blog で述べたように誕生日が1月5日である以外取り立てて共通点は無いのですが,この一風変わった反時代的な時代精神の所有者=たとえばレコ−ディング嫌い.コンサ−ト嫌い=コンサ−トの開始時,舞台の袖に出てきて,客席にいやなヤツがいると,そのまま引っ込んでしまって演奏会は取りやめになるそうです.これを単にゲイジュツカのワガガマととらえる人と,ベストの状態でしか演奏しない良心ととらえるファンとに意見は分かれます.
医者の免許とカ−レ−スのA級ライセンスを併せ持ち,自分のフェラ−リでアルプスの山の中にあるピアノを5台も並べた常温常湿室まで目にも留まらぬ早さで飛ばしてゆくABMの姿はコ−ド・ガ−ベンによる以下に詳しい.
でもせっかく遠路はるばる聞きに行ってできればその時代的場面に居合わせてみたいと思うのは当然です(後日つい最近ジョアン・ジルベルトのライヴをみなとみらい国立ホ−ルで観たとき,時代の一幕に居合わせた感覚がありました=ジョアン・ジルベルトは近く来日予定).わたしがこの個性にであう1980年以前に1回来日しているんですが,そのときは自分のピアノを送ってきて,お抱えの調律師を連れてきたにもかかわらず,「両側性腱鞘炎=詐病?」

を理由に,パンフレット無料配布にて全プログラム取りやめ.北海道から飛行機に乗って東京の会場まで来ていたある若い女性ピアニストは泣いていたと聞きます.わたしがはじめてこのマエストロの演奏に接した1980年の来日でも,わたしが聞くことができた最後のNHKホ−ルでの演奏以外の東京・横浜・名古屋・大阪でのすべてキャンセル.当時アルプスにより近く上高地を波田町の方から降ってすぐの山形村に住まっていたわたしは,母に頼んでおいたにもかかわらず忘れられたことをのろいながら道玄坂を走って昇ったことを記憶しています.このときのリサイタルも1時間ほど開演は遅れたように思います.
巨匠はなぜか,わざわざ運んできた自分のスタインウェイではなくヤマハのピアノの前に現れました.本当のところは不明ですがお抱えの調律師の体調不良が原因のようでした.オ−ル・ベ−ト−ベンのプログラム前半の2曲(Sonata op.26とSonata op.22)を無事弾き終えた後,休憩終了後席に戻ってもABMはなかなか現れず,アナウンスが流れました「ABMから会場の皆様にお知らせがあります.曰くヤマハのピアノは素晴らしいものでしたがわたしのベ−ト−ベンを表現するためには若干メカニクスの面で問題があります.」わたしの斜め前にいた初老の方は瞬間席を蹴って帰られてしまわれました.
そこで最後の Sonata op.111 を残し,3曲目の Sonata op.101 は削除.しかし円熟するまでは弾かないとポリ−ニやギレリスが敬遠していたこのベ−ト−ベンの最後のソナタの演奏は鬼気迫るものがありました.巨匠は燕尾服にバタフライで,右足を後ろに大きく引き引いた後の右手は頭上にまで振り上げられます.まさに息を飲む演奏でした.

以前ABMのインタビュウを読んだことがありました.
「なぜラフマニノフは4番しか弾かれないのですか?」
「ほかは作曲者自身の模範的な演奏があるだろう.何も自分が弾くことはない」

「同時代であなた以外でどのピアニストが偉大だと思われますか?」
「たとえば?」
「ホロヴィッツとか.リヒテルとか・・・」
「リヒテルは確かにすばらしいピアニストだ.しかしホロヴィッツはどうかな・・・」
一方ホロヴィッツの方はこの厳選したレパ−トリ−以外弾かないピアニストに対し「ABMか?その時のコンサ−トはAコ−スだったかね?Bコ−スだった?」と切り返します.

「銀夕社交界」秋の夜長にはジャズを・・・
で紹介したモダンジャズ界の帝王マイルスも,
いつか耳にしたラヴェルの「左手のための協奏曲」を,
「なんて音を大切にするピアニストなんだ・・・.
わたしにこれを1枚持ってくるように」
とマネ−ジャにいったと伝えられます.
まちがってバ−ンスタインの同じ曲を持っていったマネ−ジャは
「こんなくそは二度と俺の前に持ってくるな」としかられたそうです.
Posted by dendroboim at 07:28:26 | from category: 銀夕社交界 | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks
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