October 09, 2007

「わたしの尊敬する同時代人 5)−トム・グレーバー」


矯正歯科 : 鎌倉 dentfaco 山本歯科・矯正の blog
カマクラデントフェイシャルオ−ソピディクス山本歯科・矯正
院長 : 矯正歯科医 : 山本一宏の ブログ 142)

夏休み前後の喧騒と
大阪であった日本矯正歯科学会
への出席等・・・

あっというまに
鎌倉は深い秋に沈んで
一昨昨日
オフィスからの帰路では
夜風に潜む
木犀の甘い薫りに
ずっと忘れていた
遠くに住む
久しい友人からの
突然の便りのように
気付きました・・・

さて
長くお休みしていた Blog ですが
久方ぶりの再開です!

お伝えしたかったことは山とあるのですが
先ず最初の話題は
歯科矯正学の歴史の一幕が閉じたような
トム・グレーバーの訃報です
いまだノーベル賞受賞者のいない歯科界で
最も接近していた研究者だったため
その意味からも
逝去が惜しまれます

AJO=American Journal of Orthodonticsの記事
AAO=American Association of Orthodontists=アメリカ矯正歯科医会
WFO=World Federation of Orthodontists=世界矯正歯科医機構
ADA=American Dental Association=アメリカ歯科医師会
のニュースレターからの
抜粋でお知らせしてゆこうと想います

残念ながらこれほどお世話なりながら
日本矯正歯科学会からの
訃報や
トム・グレーバー逝去後に開催された
日本矯正歯科学会大阪大会でも
黙祷等行われなかったように所感されます

おって新たに開始した
「ティースバンク」事業
「笑顔の重要性」
「矯正歯科治療動的治療後の長期安定性」
などについてシリーズで
お伝えしてゆこうと想っております

トム・グレーバーへのオマージュ
ー巨星は永遠に耀き続ける

6月26日
我が敬愛するトム・グレーバーは
自身も UIC(University of Illinois at Chicago)
政治学教授で
66年の長きにわたって連れ添った
最愛の妻 Dr. Doris Graber
五人の子供たち=Dr. Lee W. Graber, D.D.S., Ph.D.
=Dr. Thomas W. Graber, M.D.
=Jack D. Graber
=Dr. Jim M. Graber, Ph.D.
=Dr. Susan Graber, D.D.S.
それに
14 人の孫と
ひとりのひ孫に囲まれて
静かに息を引き取りました
90歳でした

矯正歯科医の面々は
歯科矯正学の最高峰として
また
歯学生の方達には
著書である
「ブルーブック」= ORTHODONTICSや
「カレント」=Current Principles and Techinique
を教科書としていたことで
周知のことと想われますが・・・

星条旗のボウタイで有名な
トム・グレーバーは
現代歯科矯正学
臨床ばかりでなく
その生物学的背景の研究・
教育・組織機構・政治的連合
の確立に歴史上の誰よりも
寄与したといわれます

日常臨床で
ストラテジーとして利用可能な
顔面頭蓋の成長発育メカニズムは
この Blog で紹介した事象を含め
そのほとんどすべてを
我々矯正歯科医は
トム・グレーバーから
学びました

トム・グレーバーは
生涯リタイヤすることなく
60年にわたって
歯科矯正学の教師でした

死の床にあってまで
グレーバーは
UIC(University of Illinois at Chicago)
の教授であり
わたくしもその末席を汚す
World Federation of Orthodontics
official journal である
World Journal of Orthodontics
の編集長でした

矯正歯科医としても歴史上最多
表彰者であり
2003年には
我が国の天皇陛下からも
日本人以外では初の
瑞宝章=Orders of the Sacred Treasure
がおくられております

わたしたちの研究グループでも
先輩達が中心となって
その恩義に対して
漢字の印章
「富具麗歯(とむぐれいば)」と
セイコーの腕時計を
送らせていただいたことがありました

グレーバーは
毎朝必ず
「わたしのセイコーウオッチが
講義開始の時間を告げています!」
といってから
歯科矯正学の授業を開始したと聞きます

わたくしが大学に在籍中には
「ブルーブック」= ORTHODONTICS
および
「可撤式矯正装置」=
Removable Orthodontic Appliances
の日本語訳出に
微力を与させてもらえました

実は
当院の医院名
デントフェイシャルオーソピディクス
=顎顔面整形歯科
は彼の命名によるものなのです

骨格の成長発育が遺伝に限らず
外的環境の変化によって
変化しうることを
グレーバーは
我々にもおなじみな
纏足などを例に
その広範な研究成果によって
証明しました

トム・グレーバーは
矯正歯科医療の根底に
生物学的根拠をもとめ
頭蓋顔面の成長発育の制御機構を
基礎科学にまで遡り求めるため
世界中の科学者に招集をかけました

息子のリーが
日本矯正歯科学会の
岡山大会に特別講演で
来日した際に
講演のスライド係
をやらせていただいたとき
名刺を差し出して
父上の命名によるデントフェイシャルオーソピディクス
を医院名に使わせてもらっています
とお伝えした時
リーはおおきく親指をたてて
「グーッド!!」
と言ってくれたことを憶えています

つい最近にも
トム・グレーバーの紹介で来院した
青い目の患者さん
David の診療風景を
Blog で upload
したのも
記憶に新しいことです

その後
日本矯正歯科学会の
東京大会のロビーで
お見かけした時
呼び止めて
患者さん紹介のお礼について語った時
「患者さんのことかい?
それにしてもすばらしい学会じゃないか!」
とおっしゃって
フォーラムの天井の方に
腕を巡らせながら
眼を遣られました

トム・グレーバーは
始終笑顔を絶やしませんでした
その一生を歯科矯正学の
発展と普及にささげた熱情に対し
自らも少しでも波長を合わせるべく
努力することを誓って
慎んで冥福をお祈りします

以下にアメリカ歯科医師会=ADA
により配信された
訃報の全文を転載します

Eminent orthodontics educator Dr. Tom Graber dies
Posted July 13, 2007
By Arlene Furlong
World-renowned orthodontist, researcher and dental educator, Dr. Tom Graber, died in his home among family members on June 26. He was 90.

我が敬愛するトム・グレーバー
Dr. Graber

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